☆何に注目したらよいのか?


工場の生産を望ましい状態に維持するためには、まず工場の生産の状況を明確に測定出来なければなりません。それでは、工場の生産の状況を把握するのにどのような量を測定し、観測していけばよいでしょうか?


その数量がどんなものであるかを考える前に、複雑な工場をどのように見るべきなのか、その見方を与える基本的な概念についてご紹介したいと思います。ただ残念なことに、ここで述べる概念の名前が分野によって、また、業界によって、バラバラなのです。ここでは、私が学んだ名前で紹介します。

まず、工場には、部品を加工する装置があります。普通、同じ機能を持つ装置が複数、存在します。これら同じ機能を持つ複数の装置をまとめたものをステーションと呼びます。

もちろん、工場内に1台だけしか存在しない装置もありますが、その場合はその装置1台で1つのステーションを形成している、と考えます。このステーションは、ワークステーションとも、装置群とも、装置グループとも、呼ばれることもあります。


次に、工場の中を流れていく材料、部品のことをジョブと呼びます。これらが加工されて最終的には製品になっていくわけですが、最初の材料から徐々に半製品になり、徐々に製品になっていくそのものをジョブと呼ぶわけです。組立て工場などでは、2つの半製品を組み合わせて製品や別の半製品になるので、複数のジョブが装置に入って1つのジョブが出てくる、ということもあり得ます。しかし、このブログでは説明の関係上、1つのジョブが装置に入って加工されて、1つのままで出てくる場合を扱います。
ジョブは、ワークと呼ばれたり、ロットと呼ばれたりもします。


次に、ジョブが工場の中のステーションをどの順番で流れていくかを定める情報をラウティングと呼びます。つまり、ジョブが最初にどのステーションで処理され次にどのステーションで、その次にどのステーションで、という順序を示します。

  • この図ではラウティングは、ステーションA→C→D→F→完了、がラウティングです。通常ラウティングは、ジョブが属する製品によって決まります。
  • ラウティングが指定するのはステーションです。ステーションの説明を見ていただければ分かりますように、ステーションは一般に複数の装置から成ります。ジョブは次にどのステーションに行くべきかを指定されますが、その中のどの装置を選ぶかは、事前には決められていません。一般にはその時に空いている装置を選びます。
    • 上の図ではジョブは各ステーションに多くて1回しか訪れないようなラウティングですが、同じステーションを何度も訪れるラウティングも可能です。
      • たとえば、ステーションA→C→D→B→C→D→F→E→F→完了、というラウティングです。
  • 工場には一般には複数の製品が流れているので、複数のラウティングが存在し、ジョブは自分の属する製品の持つラウティングに従って、工場の中を流れていきます。それが複雑な動きを見せるであろうことは、想像出来ると思います。


以上で、工場を見る際の基本的な概念の説明を終わります。次は、これらの概念を使って、工場の生産状況を表す基本的な数量(尺度)の説明に進みます。