☆リトルの法則の厳密な証明

まず、時刻0から時刻tまでの、のべWIP

  • \Bigint_0^tWIP(\tau)d\tau

を考えます。ここにWIP(\tau)は時刻\tauの時のWIP数を表す関数とします。すると上記の積分は下図のオレンジ色で示した部分の面積を表していることになります。

この図でジョブJ_5よりあとに到着したジョブJ_6J_5より先に終わっているのに注意して下さい。サイクルタイムCT)に変動があるために、このようなケースもあり得ることをこの図で考慮しています。

次に時刻0から時刻tまでに到着したジョブサイクルタイムの合計を考えます。この例の場合、時刻0から時刻tまでに到着したジョブJ_1J_7です。よって、それらのジョブサイクルタイムの合計は、下図のオレンジ色の部分の面積になります。

これをTotal-CT1(t)で表すことにします。


さらに時刻0から時刻tまでに完了してラインから出ていったジョブサイクルタイムの合計を考えます。この例の場合、時刻0から時刻tまでに到着したジョブJ_1J_4J_6です。よって、それらのジョブサイクルタイムの合計は、下図のオレンジ色の部分の面積になります。

これをTotal-CT2(t)で表すことにします。


この3つの図を比べると、

  • Total-CT2(t){\le}\Bigint_0^tWIP(\tau)d\tau{\le}Total-CT1(t)

が成り立つことが分かります。この式をtで割ると

  • \frac{Total-CT2(t)}{t}{\le}\frac{1}{t}\times{\Bigint_0^tWIP(\tau)d\tau}{\le}\frac{Total-CT1(t)}{t}

となります。ここでジョブの完了数をC(t)とすると

  • \frac{Total-CT1(t)}{t}=\frac{Total-CT1(t)}{C(t)}{\times}\frac{C(t)}{t}

また、ジョブの到着数をA(t)とすると

  • \frac{Total-CT2(t)}{t}=\frac{Total-CT2(t)}{A(t)}{\times}\frac{A(t)}{t}

ここでt\rightar\inftyとすると

  • \frac{Total-CT1(t)}{C(t)}\rightar\bar{CT}
  • \frac{C(t)}{t}\rightar\bar{TH}
  • \frac{Total-CT2(t)}{C(t)}\rightar\bar{CT}
  • \frac{A(t)}{t}\rightar\bar{TH}

となります。ただし\bar{CT}は平均サイクルタイムを、\bar{TH}は平均スループットを表します。
よって

  • \frac{Total-CT1(t)}{t}\rightar\bar{CT}{\times}\bar{TH}
  • \frac{Total-CT2(t)}{t}\rightar\bar{CT}{\times}\bar{TH}

となります。
また、

  • \frac{1}{t}\times{\Bigint_0^tWIP(\tau)d\tau}\rightar\bar{WIP}

となります。ただし\bar{WIP}は平均WIPを表します。


よって

  • \frac{Total-CT2(t)}{t}{\le}\frac{1}{t}\times{\Bigint_0^tWIP(\tau)d\tau}{\le}\frac{Total-CT1(t)}{t}

  • \bar{CT}{\times}\bar{TH}{\le}\bar{WIP}{\le}\bar{CT}{\times}\bar{TH}

となるので

  • \bar{CT}{\times}\bar{TH}=\bar{WIP}

となります。つまり

となります。これでリトルの法則の証明が出来ました。